名義預金とは?税務署に指摘されやすい3つのパターン
名義預金は相続税の税務調査で最も狙われる
名義預金とは、口座の名義は配偶者や子ども・孫になっているものの、実質的にはお金を出した本人(被相続人)の財産とみなされる預金のことです。
国税庁の統計によると、相続税の税務調査で申告漏れが指摘される財産のうち、現金・預貯金が最も多く、全体の約3割を占めます。その大半が名義預金です。「家族の名前で預けておけば相続財産にならない」という認識は誤りであり、税務署は預金の実質的な所有者を徹底的に調べます。
税務署はどうやって名義預金を見つけるのか
税務署には金融機関への調査権限があります。被相続人だけでなく、配偶者・子ども・孫の口座まで過去10年以上さかのぼって取引履歴を確認できます。
具体的には、以下の方法で名義預金を把握します。
- 被相続人の収入と支出のバランスから「消えたお金」を追跡する
- 家族名義の口座への入金元を調べ、被相続人からの資金移動を確認する
- 届出印・届出住所・口座開設時の筆跡を照合する
- 定期預金の満期書換え手続きを誰が行ったかを確認する
税務調査官はこうした調査を日常的に行っており、名義預金を隠し通すことはほぼ不可能です。
指摘されやすい3つのパターン
パターン1:子ども名義の口座に毎年入金しているが、子どもが知らない
「子どものために毎年100万円ずつ貯めていた」というケースは非常に多く見られます。しかし、子ども自身がその口座の存在を知らない、通帳や届出印を親が管理している、入出金を親が行っている場合、それは贈与ではなく名義預金と判断されます。
贈与が成立するには、あげる側ともらう側の双方の合意が必要です。もらう側が認識していない「贈与」は、法的には贈与として成立しません。
パターン2:専業主婦の配偶者名義に多額の預金がある
配偶者が長年専業主婦で収入がないにもかかわらず、配偶者名義の口座に数千万円の預金がある場合、税務署は「その資金はどこから来たのか」を必ず確認します。
生活費のやりくりで少しずつ貯めた「へそくり」も、原資が被相続人の収入であれば名義預金とみなされる可能性があります。金額が大きいほど指摘リスクは高くなります。
パターン3:孫名義で教育資金として積み立てている
孫の将来のために孫名義の口座に積み立てるケースも要注意です。教育資金の一括贈与の非課税制度(1,500万円まで)を利用していれば問題ありませんが、制度を使わずに単に孫名義の口座に入金しているだけでは、名義預金と判断されます。
特に、孫が未成年で口座の管理を祖父母が行っている場合は、ほぼ確実に名義預金と認定されます。
名義預金と判断される基準
税務署が名義預金かどうかを判断する際の主な基準は以下の通りです。
| 判断基準 | 名義預金と判断されやすい | 贈与と認められやすい |
|---|---|---|
| 口座の管理者 | 被相続人が通帳・印鑑を管理 | 名義人本人が管理 |
| 届出印 | 被相続人と同じ印鑑を使用 | 名義人固有の印鑑 |
| 入出金の実行者 | 被相続人が入出金 | 名義人本人が入出金 |
| 名義人の認識 | 口座の存在を知らない | 口座の存在を認識している |
| 贈与の記録 | 贈与契約書なし | 贈与契約書あり |
| 贈与税の申告 | 未申告 | 110万円超は申告済み |
1つでも「名義預金と判断されやすい」側に該当すると、税務調査で指摘されるリスクがあります。複数該当する場合は、ほぼ確実に名義預金と認定されます。
名義預金を指摘されないための対策
1. 贈与契約書を毎年作成する
贈与を行うたびに、あげる側ともらう側が署名・押印した贈与契約書を作成します。日付、金額、当事者の氏名を明記し、双方が1通ずつ保管してください。
2. 名義人本人の口座に振り込む
現金手渡しではなく、名義人本人が管理する口座に振り込む形にします。振込記録が残ることで、資金の移動を証明できます。
3. 通帳と届出印は名義人が管理する
贈与した後の預金は、名義人本人が通帳・届出印・キャッシュカードを管理します。名義人が自由に引き出せる状態になっていることが重要です。
4. 110万円を超える場合は贈与税を申告する
年間110万円を超える贈与を行った場合は、翌年の確定申告で贈与税を申告・納付します。あえて111万円を贈与し、1,000円の贈与税を納める方法は、贈与の証拠を残す手段として実務上よく使われます。
すでに名義預金がある場合の対応
現時点で名義預金に該当する可能性がある預金がある場合、相続が発生する前に対策を講じることができます。
- 名義預金を被相続人の口座に戻し、改めて正式な贈与手続きを行う
- 今後の贈与について贈与契約書を作成し、管理体制を整える
- 相続税申告時に名義預金を正直に申告し、ペナルティを避ける
名義預金を隠したまま申告すると、税務調査で発覚した際に重加算税(35〜40%)が課される可能性があります。正直に申告したほうが、結果的に負担は軽くなります。
名義預金に該当するか判断に迷う場合は、ご相談ください。現状の預金状況を確認し、税務調査で指摘されないための具体的な対策をご提案します。