事業承継税制の特例措置をわかりやすく解説
事業承継税制とは何か
事業承継税制は、中小企業の後継者が先代経営者から自社株式を相続または贈与で取得した際、その株式にかかる相続税・贈与税の納税を猶予・免除する制度です。
中小企業の自社株式は、会社の業績や純資産に応じて評価額が高くなります。利益を出している会社ほど株価が高く、後継者が株式を取得する際の税負担が重くなるという矛盾を解消するために設けられました。
一般措置と特例措置の違い
事業承継税制には「一般措置」と「特例措置」の2種類があります。実務上は特例措置のほうが圧倒的に有利です。
| 項目 | 一般措置 | 特例措置 |
|---|---|---|
| 対象株式 | 発行済株式総数の2/3まで | 全株式 |
| 猶予割合 | 相続税80%・贈与税100% | 相続税・贈与税ともに100% |
| 対象者 | 後継者1人のみ | 最大3人まで |
| 雇用維持要件 | 5年間平均8割維持(未達で猶予取消) | 8割未達でも理由書提出で継続可 |
| 事前計画 | 不要 | 特例承継計画の提出が必要 |
| 計画提出期限 | — | 2027年3月31日まで |
特例措置は全株式が対象で、納税猶予が100%です。一般措置では相続税の猶予が80%にとどまり、残り20%は納税が必要です。
特例承継計画の提出期限は2027年3月
特例措置を利用するには「特例承継計画」を2027年3月31日までに都道府県庁へ提出する必要があります。この期限を過ぎると、特例措置は使えず、一般措置しか選択できなくなります。
特例承継計画は、実際に事業承継を行う時期を確定させるものではありません。「将来的に事業承継を行う可能性がある」段階で提出できます。計画を提出しておいて、実際の承継は数年後に行うことも可能です。
提出にかかるコストはほぼありません。まだ事業承継の時期が決まっていなくても、対象となる可能性がある中小企業は、期限前に提出しておくことを強くおすすめします。
適用を受けるための要件
会社の要件
- 中小企業であること(業種ごとに資本金・従業員数の基準あり)
- 上場会社でないこと
- 風俗営業会社でないこと
- 資産管理会社でないこと(一定の例外あり)
先代経営者(贈与者・被相続人)の要件
- 会社の代表権を有していたこと
- 贈与時に代表権を有していないこと(贈与の場合)
- 同族関係者と合わせて議決権の過半数を保有していたこと
後継者の要件
- 会社の代表権を有していること
- 同族関係者と合わせて議決権の過半数を保有すること
- 同族関係者の中で最も多くの議決権を保有すること
- 贈与の場合:贈与日に18歳以上で、3年以上役員であること
- 相続の場合:相続開始から5か月後に代表権を有していること
手続きの流れ
| ステップ | 内容 | 提出先 |
|---|---|---|
| 1. 特例承継計画の提出 | 会社・後継者・承継時期等を記載 | 都道府県庁(2027年3月末まで) |
| 2. 贈与または相続の実行 | 株式の移転 | — |
| 3. 都道府県庁へ認定申請 | 認定書の取得 | 都道府県庁 |
| 4. 税務署へ申告 | 相続税・贈与税の申告と猶予の届出 | 税務署 |
| 5. 継続届出書の提出 | 5年間は毎年、以後3年ごと | 都道府県庁+税務署 |
猶予が取り消されるケース
納税猶予は永久に保証されるものではありません。一定の事由が発生すると猶予が取り消され、猶予されていた税額を利子税とともに納付しなければなりません。
主な取消事由
- 後継者が代表権を失った場合
- 対象株式を譲渡した場合
- 会社が資産管理会社に該当した場合
- 会社を解散した場合
- 継続届出書を期限内に提出しなかった場合
特例措置では雇用維持要件(5年間平均8割)を満たせなくても、理由書を提出すれば猶予は継続します。一般措置ではこの要件を満たせないと即座に猶予が取り消されるため、特例措置の優位性は明らかです。
猶予税額が免除されるケース
猶予された税額は、以下の場合に免除されます。
- 後継者が死亡した場合
- 後継者が次の後継者に株式を贈与し、次の後継者が納税猶予の適用を受けた場合
- 会社が破産・特別清算した場合
つまり、後継者が生涯にわたって株式を保有し続けるか、さらに次の世代に承継すれば、猶予された税額は実質的にゼロになります。
特例措置を検討すべき企業
以下に該当する中小企業は、特例承継計画の提出を検討してください。
- 自社株式の評価額が高い(純資産が大きい、利益が出ている)
- 後継者が親族内にいる
- 今後10年以内に事業承継を行う可能性がある
- 株式の移転に伴う税負担が経営に影響する
特例承継計画は提出するだけなら費用もリスクもありません。2027年3月の期限を過ぎると二度と使えない制度です。対象となり得る企業は、早めに税理士に相談して計画を提出することをおすすめします。
事業承継税制の適用判断や特例承継計画の作成は、税理士にご相談ください。自社株式の評価から計画提出まで一貫してサポートいたします。